不器用なLOVER
「此処からなら、僕の家の方が近いけど、いいよね?」

返事を待たずに、

手を握り直し、

歩き出した。

自然に繋がれる手があったかくて

「何か不思議」

指先に少し力を込める。

「前はいつも透弥さんの制服の裾持って歩いてたのに」

私が含み笑うと、

透弥さんも手を握り返す。

「ああ、晶がまだ僕を好きになってなかったから…。恋人みたいなこと出来ないでしょ?」

「えっそれどういう意味?」

透弥さんの顔を覗き込むと、

「分からないの?」

口角を上げて笑った。

「それじゃ私が透弥さんを好きになったみたいじゃん」

素直になれず可愛気ないことを言ってしまった。

なのに、

目を丸くしたりして、

「違うの?」

真剣に聞いてる。

「なっ、何でそう思うの?」

照れ隠しに聞き返す。

「何でって。
保健室から走って来たのは、
焼き餅でしょ?」

次は私が目を丸くする番だ。

「何で保健室って知ってるの?」

眼鏡をクイッと指で押し上げ、

「秘密」

無表情の仮面を被る。

「ズルイよ。いつもそうやって、自分だけ何でも知ってるみたいな顔して…」

唇を突き出して呟く。


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