不器用なLOVER
私を一目見て、
透弥さんが小さく咳をすると、

ノックの音が響き、

「失礼いたします」

一礼をして人が入ってきた。

無言でお茶の準備をすると、

来たときと同様お辞儀をして部屋を後にする。

「今度はメイドさんだ」

人が出ていったドアを見つめ、

「何か執事さんもメイドさんも、想像してたより若くないね?」

思ったままに口にする。

「晶が勘違いしてるのは使用人。
執事は使用人頭のこと。
若い人が執事なんてなれないし、
若い人は就かないと思うけど?
…どんな本読んでるの?」

飽きれ気味に言った。

どんなって…
ほとんど漫画だけどさ。

気不味くなり、

紅茶を手に取る。

「あっこの食器もミスチだ。
雑誌とかでよく見るけど、
ジュエリーばっかだと思ってた」

センスのいいカップにソーサ、スプーンにもロゴが入ってる。

「元々は一人息子のために作った
babyjewelが始まり。
息子の成長と共に手を広げた。
…今は只の趣味」

ただの趣味って…

「ヤケに詳しいね?」

眼鏡をクイッと指で押し上げ、

「母のブランドだから」

カップに口を付ける。

えっ
お母さんのブランド

だって宮原家って云えば、
あの宮原物産で、
大資産家…。

人気ブランドのデザイナーって…

どんだけ御曹司なんだ


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