不器用なLOVER
軽く触れて離れる唇に、

「足りないって顔してる」

意地悪く言った。

「そっ、そんなこと、ないもん。でも…今の四回目だよ?」

誰かと勘違いしてる?
他の女の子としたの?
それとも数え方が違うの?

次々に浮かぶ疑問も口に出せず、

ただ見つめる。

「ああ。晶の最初のキスは、
眠ってる間に僕がもらったから」

澄まして言った。

その突然の告白に、

「ひっど〜い。
私がファーストキスだと思ってたのは、ホントは違ったってこと」

抗議の声を上げた。

「いいんじゃない。
晶がそう思うのが、
晶のファーストキスなんだ。
相手が僕であることに代わりはないしね。
なんなら、
今からしてもいいけど?」

優しく微笑み、

髪を撫でる。

「全部消毒してあげるから。
何されたか教えてくれる?」

その顔は切なく揺れ、

唇を耳に押し当てキスをする。

「ンッ…」

私の口から漏れる甘い吐息。

恥ずかしくなって、手で口を押さえた。

その手を取って、

「声、我慢しなくていいよ。
気になるなら部屋行こうか?」

首に回し、
膝の下に腕を通すと、
背中を支えて立ち上がった。

「やっ…あの、私重いから…」

足をバタバタさせる。

「うん。すごく…だから、
暴れないで」

真顔で答える。

「ひっど〜い」

回した腕を引き寄せると、

そのまま抱き直し、

「嘘だよ。晶ぐらい軽い。
僕も男だから」

含み笑う。
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