不器用なLOVER
「…駅の階段から突き落とされ、怪我で入院した。
卒験も受験も受けられず中等浪人して違う高校に通ってる」

女子だけが狙われるなら
関わらなければいい。

委員も席順も…総てを支配出来るだけの絶対的な権力を手に入れるために、
理事長と取引した。

誰にも口出し出来ないように、
寄付金の倍増。
模試の好成績。
3年間の生徒会長就任。
学園行事の運営。

誰にも口出し出来ないけど誰にも真似できない。

一人で背負い込んでいたんだ。

生徒会にも各行事の実行委員にも女子は入れない。

「晶は、特別なんだ」

その言葉に堪えていたものが溢れ出す。

「透弥さんっ…」

私の頭を包み込むように、抱え額を合わせる。

「それでも晶を離せなかった。
勝手に巻き込んだのに守れなくて…ゴメン」

どんな気持で会長室に招いたの?
自分のせいで、誰かが傷付くのが恐いはずなのに。
また私のために傷付いた?

溢れ出した涙が頬に伝い、それを透弥さんの優しい唇がなぞる。

「もう二度と、晶を泣かせない。だから傍にずっと居て欲しい」

うつむいた私の顔を覗き込むと、

「晶が嫌ならもう言わない」

その目が揺れて、微笑する。

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