不器用なLOVER
「晶が謝ることじゃないでしょ?それに…関係ないんだ。
話したかった。
会いたかった。
触れたかった。
ただ、それだけなんだ」

再び強く抱き締められる。

「そう思い始めたのはいつ?」

顔を埋めたまま呟く。

「…晶に勉強教える口実に誘ったのに、来なかったでしょ。晶を待ってる自分に気付いたんだ」

そっか。
行かなくて正解だったかも。

含み笑ってしまう。

短く息を吐き、

「…今回のことで理事長にはまた借り作ったから」

透弥さんの言葉に血の気が引き、顔が強張る。

今回のことってやっぱり私のことだよね?

辰おじさんに言ったの?

息を呑み込む。

私の変化に気付いたのか、

「防犯について調べたいからカメラの映像を貸して欲しいって頼んだんだ」

付け加える。

言わないでくれて安堵する。

辰おじさんから父に話がいくかもしれなかったからだ。

「当然、生徒会長もただの生徒に過ぎないから簡単には貸してもらえるものじゃない」

まさか…。
また条件を出されたんじゃ?

透弥さんの顔を見たくても、私の頭に顎を乗せているせいで動かせない。

どんな顔してるの?
淡々と話す透弥さんの声からは感情を読み取れない。
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