不器用なLOVER
「前に言ったと思うけど、赤点は夏休み返上で補習だから」

更に追い打ちを掛けられる。
明らかに取り乱した私に落ち着いた声で

「今からやれば間に合うよ」

微笑む。

だけど私は首を振り、

「無理だよ。全然分かんないだもん」

腰の手に力が加わり更に引き寄せられた私は透弥さんの膝に横座りする形で倒れた。

「僕が居るから」

静かに額にキスを落とした。

「うちの学校は高校3年間の履修学科を1年で終らせるから。2年で転入してきた晶が出来ないのは当然なんだ」

社長や政財会の子息令嬢を卒業までにいつ社会に出ても困らない様に、要するにいつでも継げるように育てあげる教育方針をとっている。
ブルジョアならではの方法らしかった。

「基礎が分かってないなら基礎を覚えればいい」

簡単に言うけど…。
透弥さんを上目使いで見上げる。

目が合ったと思ったら直ぐ外され

「またそんな顔する」

小さな溜め息を吐く。

「…僕も男なんだけど。
意識されてないのか信用されてるのか。それとも誘ってるの?」

私を見ることなく呟く透弥さんの意図が読めない。

「透弥さん?」

私の問掛けに、目尻を下げる。

「全部外れかな。無防備で無自覚…」

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