不器用なLOVER
「法学は商法のここを中心に暗記すればいい。
現代語、政治、経済、生物は…ここを。社会は…ここと時事問題。外国語は…フランス語」

透弥さんが教科書とノートに印を付けていく。
時折ワンポイントを書き足し、
要点を解りやすくまとめ、
重要点にマーカーを入れた。

「これ等は丸暗記すればいいだけだけど、問題は数学だね」

丸暗記自体自信はなかったけど、
透弥さんの必勝ノートのお陰で、なんとかなりそうな気がする。
数学は応用問題だもんね…。

「焦らず地道に繰り返し取組むしかないかな?」

透弥さんの仕事の邪魔も出来ないし、

「分かった。明日から家で勉強することにする…」

やっと一緒に過ごせるようになったところなのに。
期末試験が終わるまで話せなくなるのは寂しいし、ヤだけど。

肩を落として呟く私に、
呆れて言った。

「此処でするんじゃないの?」

当たり前のような態度に嬉しくて顔が綻ぶ。
それと同時に、どんどん貪欲になっていく自分が少し怖かった。

顔を見るだけじゃ物足りなくて、
近付きたくて、声が聞きたくて、傍に居ることに慣れてしまったら次は何を欲しがるの?

こんなに誰か一人に執着したことなかったから、止められない気持に戸惑ってしまう。

私は初めての恋で浮かれ過ぎなのかな?
< 70 / 315 >

この作品をシェア

pagetop