不器用なLOVER
触れる寸前。

「今日は此処まで…帰るよ」

透弥さんが離れる。

何をしようとしてたの私は
自分からキスするつもりだった?
落ち着かない鼓動。
熱った顔を両手で覆う。
気付かれてないよね?

視線だけで盗み見る。
何事もなかったかのように普段通りパソコンを操作している姿に、そっと胸を撫で下ろす。

透弥さんがタイミング良く動いてなきゃ取り返しが付かないことをするとこだった。

タイミング良く?
自分の言葉に引っ掛かる。
ホントにタイミングが良かっただけなのかな?
偶々?偶然?
考えれば考える程同じ結論に辿り着く。
…避けられた?

付き合う前は、好きだって気付く前は、透弥さんからキスしてきていたのに…。カレカノの確認をした時から私を抱き寄せたりもしてない。

毎日手を繋いで帰るけど、必要以上触れない。近付かない。

真姫や登喜子が言うようにホントは自分がモテることを知ってる?
彼女達が考えるようにホントは軽い人なの?

只のゲームだったのかも。
それなら説明がつく。

振り向かせることを楽しんでた。私が簡単に堕ちたから…。

今はただの…お荷物?
捨てられない…粗大ごみ?

世間体を気にして私を邪険に出来ないだけ…。


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