不器用なLOVER
「本当かどうかは分からないよ。ただ火のないところに煙は起たないって…」

登喜子が呟く声が頭を霞めた。

「少なくても一人は知ってるし」

どういう意味?
ホントに中絶させられたって人が居るの?

目を見開いて次の言葉を待つ。

「他校の子と塾が一緒で仲良くなったんだけど、その子の友達が、会長に告白して付き合ったらしいんだけど…」

登喜子が真姫の目を見た。
真姫は頷くと、

「その日のうちにホテル連れてかれて手出されちゃって、その後は連絡取れなくなって…偶然街で他の女と居るの見掛けて声掛けたのに、知らないって言われたんだって」

真姫と透弥さんの話を重ねるけど噛み合ってるとは思えない。
透弥さんに近付く女の子は被害に合うはずなのに…。私だって襲われかけた。
だから皆遠巻きに見てるんじゃなかったの?

「この学校の子は会長に近付かないけど…その噂のせいなの?」

それまで黙って聞いていた衣里が首を振った。

「この学校は会長の…宮原物産の息が掛った会社や政治家金融関係の家が多いから、今の噂はね他校で拡がった噂で、信憑性は低いのよ」

衣里を仰ぎ見るのと、

「だけど、広岡が嘘ついてるとは思えない」

登喜子が衣里に食って掛るのが同時で、

「広岡ってのは登喜子が言ってた塾の子で登喜子の片想いの相手」

真姫が一人冷静に説明した。

つられて見れば顔を赤く染めていた。

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