不器用なLOVER
扉を開けた透弥さんの声は低くて

「何?」

威圧的だった。

「あれ?もしかして邪魔した?」

姿は見えないけどこの声は聞き覚えがあった。
それもついさっき…。

何で?

「分かってるなら、もういい?」

感情がこもってない分先程よりも冷たく聞こえ、

「待てって透弥。晶ちゃんが俺に用があるんだってよ」

何言ってんのよ

「晶が?」

更にトーンを落とした透弥さんが振り返り、私はおもいっきり首を振って見せた。

「来てないけど…」

「入ってくの見ちゃったし、居るんだろ?入れてよ」

軽い調子で話すその男に、

「聞こえなかった?
朋弥に用がある晶は此処には居ないから」

感情を押し殺した声で言い放つ。

初めて聞くそれに、心臓を鷲掴みにされ恐怖で縮む。
きっと聞いた者の大半は同じ様に思うはずだった。

「そう怒んなよ。別に捕って食おうなんて思ってねえし」

朋弥と呼ばれたその男は別段気にする様子もなく

「ただお前の惚れた女に興味持っただけだって」

続けた。

今惚れた女って言ったよね?
透弥さん私のこと他の人に話してたりするのかな?
少しだけ興味を持ってしまう。

「朋弥には関係ないと思うけど」



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