不器用なLOVER
透弥さんと手を繋いで帰る帰路、

「ご機嫌だね?晶」

目尻を下げた透弥さんが私を見つめている。

満面の笑みを溢して頷く。

今日一日で昨日とは180度変わった気分の私はやっぱり単純だと思う。

朋弥さんは私を透弥さんの惚れた女だって言ってくれたし、

透弥さんは私をかばって下敷きになってくれるし、それから朋弥さんから守ってくれたし、

副会長と話し合い中もずっと離さないでくれた。

これ以上ないくらい幸せだよ。

「避けられてるかも?なんて心配して損しちゃった」

「えっ」

ヤバっ…また声出してた。

う〜ん、でもこの際悩んでたこと言っちゃおうかな。
くだらな過ぎて呆れられるかな?

「透弥さん…」

立ち止まって見上げる。

「何?」

合わせて立ち止まった透弥さんは私を見つめる。

「…お願いがあるの」

上擦りそうになる声を誤魔化し、うつむく。

「それはこの前の課題のうちの1つってことでいいの?」

上目使いで見つめ返す。

「そうじゃないなら聞かない」

歩き出そうとする透弥さんの手を引き留めた。

「それでもいい。…から」

お願いしてしてもらうのなんてホントは変だよね?

好きな相手とはしたくなるものじゃないのかな?

ふいに登喜子の言葉を思い出した

【下手な相手とはいくら好きでもしたくない】

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