不器用なLOVER
翌日の放課後

会長室には行かず、37HRに居た。

「んで…俺に相談ってわけ?晶ちゃんも顔に似合わず惨いことするねぇ〜。俺的には大歓迎だけど」

後ろめたさも加わり激しく動悸がする。

「じゃあさ、俺が練習相手になるってことでいいんじゃない?」

この男を訪ね、話があると教室で待つように頼んだ昼休みを既に後悔し始めていた。

ニヤつかせた顔を近付かせるが、それを力任せに押し返した。

首を左右に鳴らし、

「何で?透弥にその気にさせる、キステクが欲しいんでしょ?」

私が遠回しに濁して説明したことをあっさりまとめて言った。

「そんなの説明したって分かんねぇじゃん?何事も実践あるのみっしょ?」

私の両肩を掴み顔を近付かせる。

「ヤっだ…さっき惨いって言ってたじゃないですか」

胸を押し返すも無意味で、右に左に大きく避けるのが唯一の抵抗。

多分本気じゃないのが分かった。
本気なら顔を押さえ付けることもできるし、肩を掴む力だって痛くなかった。

「ん〜、透弥からしてみれば惨いよね。惚れてる女が他の男…しかも俺を頼るなんてさ?」

「透弥さんとはどんな関係なんですか?」

朋弥さんの視線が一瞬廊下に移動し、悪戯っぽく細まった。

「キスしてくれたら、教えてあげるよ」

肩から一方をずらし頭を固定され逃げられないことに気付いた時はすぐ目の前に迫っていた睫毛を伏せ少し潤んだ瞳を
綺麗だと思った。

< 89 / 315 >

この作品をシェア

pagetop