恋人は専属執事様Ⅰ
私の言葉に鷹護さんも顔を上げてくれて
「畏まりました。お嬢様のお気持ちにお応えすべく、執事候補生一同 誠心誠意を以て努めさせていただきます」
と改めて深々と頭を下げると、顔を上げて執事候補生たちにまた指示を出し始めた。
執事候補生たちは不満そうな顔をしながらも、次々に教室から出て行った。
「はぁ~…」
急に力が抜けて、私は椅子にペタンと座った。
「ごきげんよう、松本さん。朝から何かございまして?わたくし、先ほどまでお稽古で今来たばかりですのよ」
暢気に話す二階堂さんに視線を向けて、私はまた溜め息を吐いた。
「それで、何がありましたの?」
ニッコリと微笑む二階堂さんは、何が何でも聞き出す積もりらしい。
私は今までの出来事を掻い摘んで説明した。
二階堂さんは1人で頷いて勝手に納得したみたいだった。
「でも鷹護さんらしいですけれど、らしくないとも言えますわね…」
何で?何が?
私をまじまじと見て、二階堂さんが
「あなた相手だと第二の氷雪の君最有力候補も熱くなってしまわれると言うことかしらねぇ…」
と楽しそうに笑った。
「一応、許婚だからじゃないかなぁ…」
ポロッと言った私の一言に、二階堂さんがすごい勢いで食い付いた。
「どういうことですの?どなたとどなたが許婚ですって?」
慌てて二階堂さんの口に手を当て、顔を寄せて私はコソコソと内緒話をした。
「まぁ!鷹護さんがあの鷹護家の方だなんて…執事候補生などしていらしたから思いもよりませんでしたわ…」
二階堂さんが小声で驚きを隠せないように、興奮して話している。
「もしかしたら身分を隠していたいかも知れないから、鷹護さんのお家のことは内緒にしてくださいね?」
私が二階堂さんの目を見ながらお願いすると、二階堂さんはニッコリと微笑んで
「勿論ですわ!」
と言ってくれたけど…
「内緒にしていた方が面白そうですもの!正式にご結婚がお決まりになりましたら、わたくしに真っ先に教えてくださるわよね?約束ですわよ!」
と言う言葉に、私はガクリと肩を落とした。
< 40 / 70 >

この作品をシェア

pagetop