恋人は専属執事様Ⅰ
3
お昼休みに中庭を歩いていたら、偶然鷹護さんと会った。
「あ、先ほどは…」
お礼を言い掛けた私の言葉を遮って、鷹護さんが険しい顔で
「まさかお一人でお散歩をされていらっしゃるのですか?」
と言った。
そうだ、藤臣さんからも1人でいたら駄目って言われたんだった。
バツの悪そうな顔をした私に、鷹護さんはベストのポケットから懐中時計を取り出して、時間を確認すると
「お一人では危ないので、わたくしがお供させていただいてよろしいでしょうか?」
と言ってくれた。
「はい、よろしくお願いします」
私が笑顔で応えると、鷹護さんはまた険しい顔をして
「お嬢様、使用人にそのように振る舞われることはおやめくださいと申し上げた筈でございます」
と私を諫めた。
うぅ…学習能力がないって呆れられたよね?
眉尻を下げて上目遣いで鷹護さんの顔を見つめたら、鷹護さんに視線を外されてしまった。
「あの…怒っています?」
おずおずと私が訊くと視線を外したまま
「怒っておりません」
と鷹護さんが素っ気ない返事をした。
「それじゃ、呆れています?」
また私が質問すると、視線を外したまま
「それは…少々ございます」
と鷹護さんが言った。
やっぱり呆れられているんだ…
情けなくてうっかり涙が零れてしまった。
鷹護さんが慌ててハンカチを差し出してくれて
「言葉が過ぎました。申し訳ございません」
と謝ってくれた。
謝るのは私の方なのに…
「違…くて…自分が情けなく…て…悔し…です…」
途切れ途切れに言う私の言葉を、鷹護さんはちゃんと聞いてくれた。
近くのベンチにジャケットの胸ポケットからポケットチーフを取り出して敷いてくれた。
促されるままに私が座ると、隣りに鷹護さんも座った。
私が泣き止むまで、ずっと背中を優しく撫でてくれた。
泣き止んだ私は、思っていたことを鷹護さんに訊いてみた。
「鷹護さんが私に構ってくれるのは、私が鷹護さんの許婚だからですか?」
鷹護さんが一瞬だけ驚いた顔をして、直ぐに生真面目な表情になった。
「ご存知でしたか…藤臣さんからですね?」
不快感はなく、ただ確認する為だけのような口調だった。
「はい、昨日のデモンストレーションのお話をした時に教わりました」
私が応えると、鷹護さんが私をジッと見つめた。
「あ、先ほどは…」
お礼を言い掛けた私の言葉を遮って、鷹護さんが険しい顔で
「まさかお一人でお散歩をされていらっしゃるのですか?」
と言った。
そうだ、藤臣さんからも1人でいたら駄目って言われたんだった。
バツの悪そうな顔をした私に、鷹護さんはベストのポケットから懐中時計を取り出して、時間を確認すると
「お一人では危ないので、わたくしがお供させていただいてよろしいでしょうか?」
と言ってくれた。
「はい、よろしくお願いします」
私が笑顔で応えると、鷹護さんはまた険しい顔をして
「お嬢様、使用人にそのように振る舞われることはおやめくださいと申し上げた筈でございます」
と私を諫めた。
うぅ…学習能力がないって呆れられたよね?
眉尻を下げて上目遣いで鷹護さんの顔を見つめたら、鷹護さんに視線を外されてしまった。
「あの…怒っています?」
おずおずと私が訊くと視線を外したまま
「怒っておりません」
と鷹護さんが素っ気ない返事をした。
「それじゃ、呆れています?」
また私が質問すると、視線を外したまま
「それは…少々ございます」
と鷹護さんが言った。
やっぱり呆れられているんだ…
情けなくてうっかり涙が零れてしまった。
鷹護さんが慌ててハンカチを差し出してくれて
「言葉が過ぎました。申し訳ございません」
と謝ってくれた。
謝るのは私の方なのに…
「違…くて…自分が情けなく…て…悔し…です…」
途切れ途切れに言う私の言葉を、鷹護さんはちゃんと聞いてくれた。
近くのベンチにジャケットの胸ポケットからポケットチーフを取り出して敷いてくれた。
促されるままに私が座ると、隣りに鷹護さんも座った。
私が泣き止むまで、ずっと背中を優しく撫でてくれた。
泣き止んだ私は、思っていたことを鷹護さんに訊いてみた。
「鷹護さんが私に構ってくれるのは、私が鷹護さんの許婚だからですか?」
鷹護さんが一瞬だけ驚いた顔をして、直ぐに生真面目な表情になった。
「ご存知でしたか…藤臣さんからですね?」
不快感はなく、ただ確認する為だけのような口調だった。
「はい、昨日のデモンストレーションのお話をした時に教わりました」
私が応えると、鷹護さんが私をジッと見つめた。