君の声、僕の歌姫
「それで……な。スティー、聞きたい事があったんだ」


人前だというのにラウトはスティーを抱き寄せ、彼女にしか聞こえないように言います。

スティーはその言葉に白い肌を赤く染め、青い瞳を揺らしました。


「返事は、帰って来てからお前の声で聞かせて?
俺はスティーの声で聞きたいから。今此処で返事をしないでくれ。言い逃げで嫌かもしれないけどさ」


ラウトから解放されても、スティーは相変わらず顔は赤いままでした。

その顔が赤い理由を知っているのはきっとローゼだけでしょう。


「じゃ、軽く準備したら行ってくるよ。絶対戻るからな! 待ってろよ!」


教会を出て必要最低限の物を持ちだし、フェネルからもらったペンダントを首にかけ、

ラウトは村から勢いよく飛び出しました。彼の旅が今始まりました。
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