君の声、僕の歌姫
(私に出来る事があれば、何だってします。ラウトを助けて……!)

ラウトの手を握りそう祈れば、スティーの耳元で誰かが囁きます。

それはさっきから泣いていたローゼの声。しかし様子が違います。


『この男を助けたいか?』

「ええ、助かるのならば何だってします」


今のスティーにはこれが誰なのかと言う疑問はありません。

ただラウトを助けたいという気持ちしかなかったのでした。


『ならば、その声を。その声と引き換えに助けよう』


スティーは悩む事なく声を差出しました。

陸にあがりたい人魚姫のように、ラウトを助けたい一心で。
< 6 / 227 >

この作品をシェア

pagetop