君にキス。
校門の前でこの雨の中、傘も差さずに佇んでいる一人の少女。
栗色のふわふわした長い髪、だけどそれは、雨の性でペタリと、どこか寂しそう。
──…寒そう、雨が降っているのに。
だれか待ってるのか?
周りを見渡すが人が出てくる気配もない。
仮にだれか待ってるのだとしても、こんな雨だから帰ればいいのに。
傘を差していない、それを見て思う。
持ってないんだ、この子は。
俺は何故か、その少女が気になった。
それが何故かわからない。
何かに衝動を受けたのか、その時自分は何を考えていたのか、それすら曖昧で。
そしていつの間にか、
「……使う?」
相川、と書いてある傘を、その少女に差し出していた。
「…えっ、そんな……」
微かに聴こえたその声を聴いて、拒否している感じもしたが強引に傘を渡す。
少女は申し訳なさそうに俺を見上げた。
「……風邪、引かないようにね」
ふっと微笑んでその場を離れて、俺は走って家に向かう。