君にキス。
「…本当に助かりました」
「……風邪、引いてないならよかった」
傘を受け取りながらそう言えば、
「相川さんのおかげです」
と、ふと笑顔が見えた。
その笑顔に、無意識に吸い込まれるように魅入ってしまう。
「…それでは」
軽いお辞儀をして、慌ててクラスから出て行った少女。
小走りで教室を出て行った少女。
その姿はすごく愛らしく、ああ、あの子はモテるだろうな、と思う。
ふと見えた笑顔が瞼の裏に焼き付いて、当分離れそうにない。