君にキス。
2.遅すぎた自己紹介。
「陸ーっ」
今日も元気に、朝から深の声が登校時の道に響く。
今日深と会ったのは、いつものコンビニより少し離れた住宅街。
深の声は透き通るほどよく通り、もう近所迷惑ではないかと、朝の平和な住宅街の一時を一発でぶち壊すのではないかと心配するほど木霊する。
「うっせぇって」
周りを見渡し、迷惑そうに眉間にシワを寄せて深に言う。
こんなのが毎日続いたら、いつかきっと訴えられるに違いない。
その時は俺は言うことを決めている。
「俺はこんな奴知りません、ただのストーカーです」、と。
「いやあ、元気がいいと言ってほしいよー」
テンションはいつものように高く、それが今日は少し鬱陶しく感じてしまう。
そしていつものように、深はコンビニのビニール袋を覗く。
「あれ、陸今日メロンパンじゃねえの? 蒸しパンじゃん」
「…売り切れてたんだよ」
そう、今日は蒸しパン。
メロンパンが売ってなかった。
有り得ない、有り得ない、有り得ない、有り得ない。
メロンパンは絶対にコンビニに置いておかなければならない、俺にとっていわゆる必需品なのだ。
だから今日は、あまり機嫌がよろしくない。