君にキス。
「深、お前の名前耳にタコ」
「陸が忘れたって言うから……」
あからさまにブルーな雰囲気を醸し出して、深はため息をつく。
「大体人の名前忘れるとか、ないだろ」
「だよなー、そうだよな!」
ホッとしたように言う深は、さっきより眉が下がっているように見えた。
「そういえば、陸の名前は一回で覚えたなー…」
「…なんで」
「んあ? なんつーか、いろいろ面白かったし? ……自己紹介の発表の紙とか」
深が言う自己紹介の紙。
それは二年生になってクラスが変わった時に書いた紙で、自分の趣味やら特技、そういうものに答えていくっていう……、まあ、自己紹介の紙。
今はクラスの後ろの掲示板に、みんなのか並べて貼ってある。