君にキス。






「助けてほしいなら言えって」


本当にトイレに来たかったのか、それだけを言いたかったのか、俺は「はいはい」と返事。


「…助かった」






女は苦手だ。



────



放課後。


「さーて、陸、どっか行く?」

「お前部活行けよ」

「えっ、なんでさ」

「サボり魔め」




俺の部活は帰宅部、大体部活には興味はなく、中学んときは一応バスケ部だったが。



「んで陸、どっか行く?」

「いや、雨だしやめとくよ」




窓の外を見ると、雨。
午前に降り出した雨は止むことはなく。


「そっかー…、なら今度だな」






深が呟き、二人して廊下を歩く。
教室を出たのが遅かったためか、やっぱり下校済みだ。




そして深所属軽音楽部の部室からも、かすかにギターの音が聴こえる。
するとそのドアがガラッと空き、
「あっ、深先輩! またサボりですかー?」




「先輩」と呼んでいるところから一年とわかる。
まだ小さい一年女子。
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