君にキス。
「うげ…、見つかったかぁ…」
深は顔を歪ませ、頭を掻きながら女生徒に近付いた。
小さな女の子がひとり、そしてその子を追ってまたひとり。
「ちょっと先輩、ベースいないといつまで経っても合わせれないんですから!」
「ごめん、ごめんって!」
二人して深を追い詰めていく一年女子。
慌てふためく深が面白くて、しかし笑うことなく。
たまには部活に行けよ、という真意も込めて、
「深、」
肩をポンと優しく叩き
「部活、頑張ってな」
嫌みな笑みを最後に残し、
「ちょっと陸待てよー」
叫ぶ深を後目に歩き出す。