君にキス。
「ついてくんなよ」
「いいじゃんいいじゃん、照れんなってー」
照れてねえし、お前に照れるとかねえし、一生ねえし、まじ有り得ねえし。
深はベンチの後ろからゆっくり回って前に来て、手に持っていた弁当箱を目の前に出して、
「ご一緒させていただきまーす」
とにこやかに笑う。
断る隙を与えることなく、強引に俺の隣に座り、弁当箱を開いていった。
中庭に男子高校生が二人でベンチに座り昼飯を食べている光景は、第三者からしたら『あの二人仲良しなんだねー』と思うか、『キモッ』の二つ。
俺がもし第三者だったら『キモッ』に一票だ、確実に。
それを考えると、メロンパンを食べている手を急に止めて、深をまじまじと観察してしまう。
いや、観察と言うより凝視のほうがあっているかもしれない。
じーっと見つめれば、深は弁当箱に入っていたプチトマトを箸で摘む……が、ツルッと滑り、また弁当箱の中に戻される。
何度も何度もプチトマトを摘みは落とし、最終的には箸でプチトマトを突き刺した。