君にキス。






しかし口が悪い。


誰にでも毒舌…、というか何というか……。
深から言わせれば俺の方が毒舌らしいが。




まあそんなことはどうでもいい。




「で? 体育館にいたのって誰だったの?」





深の言葉で不意に現実に引き戻される。
ハッと深を見れば興味あり気な目つきでこっちを見ている。






ここで夏川と言えば、深はどんな反応をくれるだろうか。


つーか、ただでさえ深は昨日の相合傘を勘違いして捕らえているってのに、ここで言ったらもっとやばくないか?

いやしかし、「誰もいなかった」の方がダメだ。







誰もいない昼休みの体育館に、フルートの音、入っても誰もいなくて、弾いていたのは誰だったんだ! となり、また深がその学校都市伝説として広めたら……、そう思うとどっちも手段はないと考えられる。






「…知らねえ奴だった」




不意に深に嘘を付いてしまう。
悪いな深、しかしこれはあくまでお前の無駄な暴走を防ぐため。
仕方がないことなんだよ。

まあ、深がもっと全体的に落ち着いてくれたりしてくれたら、嘘も付かずに済んだのに。





「女の子だった?」

「…まあ」

「よし、なら俺明日見に行こー」



まずい展開となってしまったかもしれない。
まあわかったときはわかったときで仕方ないが。







明日は夏川の言っていたほとんど毎日の『ほとんど毎日』に入っていませんように。
ふと、手を合わせてお願いしてしまった。
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