君にキス。







────



「では、……解散」




あっという間に一日は終わり、気が付けば放課後。

深は「ちょっと待ってろ」と、俺に言い残し、すぐに部活の後輩に引っ張られて行ってしまって、俺は深の帰りを待つ羽目に。




教室には俺と、……何故か前川。








「国崎くん帰んないの?」

「…深に待ってろって言われたから」

「ふーん」




休み時間同様、前川はケータイ片手に指が素早く動いている。


あれを故に“親指族”と言うんだな。






「…前川は? 帰んねえの?」

「友達待ち…、とでも言っとく」




前から思っていたことだったけど、前川ってよくわからない。


何かと絡むが……、と言ったら失礼だろうけど、最近よく話すけど。






──掴み所がない。




隣に座っている前川をしばらくの間凝視する。
目を細めたり、かと思えばパッチリ開けたり。

何を考えているのやら。




ふうっ、と息を漏らして視線を廊下に移すと、隣からパタンと音がした。
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