君にキス。






腹を抱えて唸る深を跨いで、ベッドから脱出。
部屋の真ん中に置いてある黒い机の上のケータイを無造作に掴み、開いて時間を見る。


AM9:36




まだ早いのに、なんで深がここにいる……


寝癖が酷い髪を手で軽く直し、欠伸をしながら部屋を出ようとドアノブに手を掛けた……、が。




「なあ、今日暇ー?」


ベッドの上の深が、背中を向けながらそう言った。
俺が何も言わないでいると
「ちょっと付き合ってほしいんだけどー…、ダメ?」






「ダメ?」の声でバッとこっちを見る。


ここでダメ、と言ったらどうなるか予想してみる。




「なんでー?」、となる。

承諾するまで帰らない、となる。

わがまま言い出す。







「…わかった」




そう言うと、深はパッと一瞬で笑顔になる。

「よっしゃ! なら陸! 早く着替えて!」



……結論。
家に迷惑が掛からないようにするためにも、深の言うことを素直に聞いていた方がいい。




そっから先は何も訊くまい。
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