君にキス。
そこに見えたのは、ケータイを耳に当て、スラッと細身、学校の時よりメイクアップして、周りの女子より輝いて見えるだろう、……前川。
正真正銘、クラス委員長、前川由利だ。
間違いなく、間違いなく、前川の行き先は俺と深がいる、このシャレたカフェだろう。
前川の周りには友人らしき奴らが、絶えず手鏡を覗いている。
薄々気づいてはいた。
すると、はあ、とケータイから前川のため息が聴こえた。
そして、
『…合コン、って言葉、聴いたことない?』
合コン、そう聴いた瞬間、
「陸? どこ行くんだよ!」
「俺は帰る! 付き合ってられるかッ!」
……無性に帰りたくなった。