君にキス。






「…国崎くんも連れてこられたんだっけ?」



前川がさり気なく言った言葉に、俺はつい聞き直す。





「“も”、って?」

すると前川はクスッと笑った。



「あたしも連れてこられた身、同じだね」

「…じゃあそのメイクは……」

「そこにいる友達にやられただけ。あたしこんなに厚化粧しないっての」



チラッと盛り上がる他女子四人を見て笑い、近くにいた店員に「アイスティー一つ」、と頼む。

厨房に駆けていった店員を見送り、開いていたケータイを静かに閉じ、綺麗な足を組み直して、いきなり俺の耳に顔を近付けた。







そして、
「あたしの噂、聴いたことある?」



と、小さな声で訊いてくる。
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