君にキス。
「…噂?」
少し前、クラスメートの短髪から聴いた噂。
「聴いたことあるでしょ?」
……でも、その噂は
『この噂、佐藤には絶対秘密な。お前仲いいから心配だけどさ、…前川にもな』
のお約束付き。
──試しているんだ、俺を。
だから
「……噂なんて知らねえよ」
内心、あの噂が本当か聞きたいところだった。
だけどやっぱりやめておく。
「…そっか、ならいいよ」
少しだけ安心したように、前川は俺から離れた。
嘘を付いていなかったら、あの噂の真相を聞けたのだろうか。
……『前川が──』
あの先の短髪の言葉を、他の女子らとゲームを楽しんでいる深を見ながらリピートさせる。
またケータイを開いていた前川もチラ見しながら、複雑な心境に駆られたのは言うまでもない。