君にキス。








──昼休み。


深がいないけど、いつも通り中庭でメロンパンをかじる。
変わらない味なのに、いつも食べている味なのに、なんかいつもより苦く感じる。





隣にいない深を考えると、口の中のメロンパンを噛むのを忘れる。
しばらくの間、すっかり夏になった気温を感じながら、ボーっとしていた。


ざわついている周りの音や声など、聞こえてはいない。






そして、自分でも何を思ったのか、食べかけのメロンパンを袋に戻す。

中庭のベンチから体を離し、歩き出した。









──安心、したかったのかもしれない。


だからきっと俺は、……体育館へ向かっているんだ。
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