君にキス。






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フルートの音が止まると共に、栗色の髪がフワッと踊る。

気が付けば、ステージにいた夏川がいつの間にか目の前にいた。






「…また来てくださって嬉しいです」


ニコッと微笑んで、夏川独特の雰囲気が俺を包む。
いつからか暑さを感じなくなる。






「暑くないのか? …毎日こんなとこで」

夏の体育館は、熱がこもってじわりじわりと暑い。
真夏ではないが今は初夏。




「外でやれたらいいんですけど……、うるさいって迷惑かけてしまいますから」


もう何年もやっているのだろうか、銀のフルートを馴れた手付きでしまう。
フルートをしまい込んだ箱には、“なつかわなほ”と平仮名で手書き。





珍しいな、と思った。
普通吹奏楽部なら、部から楽器を借りるはず。


「……何年やってるんだ? フルート」

「えっと…、小学生の時からちょっとずつ…ですから、約10年くらいです」






10年………
まさかの二桁に驚く。
よく飽きずに続けてきたもんだ。
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