君にキス。
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『傷付くのは前川だ』
それは的中した。
なんで俺は、その間に上手いこと挟まれているんだろうか。
「なあ国崎、」
「…ん?」
たった10分間の休み時間。
俺が噂を知ってしまった元凶の短髪が、急に俺の隣へと来た。
「あの噂の真相、知らねえ?」
……なんでいつも俺に訊くんだ。
確かに深とよく一緒にいるけど。
他にも知ってる奴ならいるのに、…多分。
「……さあな」
やっぱり嘘を付く。
深はともかく、傷付くのは……
「ふーん…、やっぱ本人に訊くしかねえのかな……」
その短い髪をガシガシと掻きながら、俺の隣から立ち去ろうとする短髪。
──このままきっと、あの窓際でケータイをいじっている深の元に行くつもりだ。
「…おい」
小さく、そして低く。
自分でも聴いたことのない声が、喉から出た。