君にキス。






「ん?」


振り返る短髪は、少し驚いた顔をした。
多分、俺から話しかけたことがなかったからだ。
──それに、いつもより声が低かったからだ。




でも引き止めてどうする?
…俺に、何が出来る?






「話ねえなら行くぞ」


自問自答を繰り返していたら短髪がそう言った。
そして踵を返して歩き出そうとする。








俺は短髪のアクセサリーがたくさん付いた腕を咄嗟に掴んだ。
シルバーアクセが妙に冷たい。




「……国崎?」


行かせたら、深が言っていたことが絶対に前川に伝わる。
それで悲しむのは、








「何してんの?」




前川なのに。
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