君にキス。
今まで教室にいなかった前川のいきなりの登場。
前川の席の前だから、気になったのだろうか。
話していたことが前川ということもあって、ドクンと脈打った。
「いやっ、別に何も」
あからさまに焦る短髪は、俺に向かって「そうだよな?」と問い掛ける。
前川はそう訊かれる俺をじっと見ていた。
──視線が痛い、怖い。
ジリジリとした視線を体中で感じながら、こくりと小さく頷いた。
「…座れば?」
半分諦めたようにため息が聞こえて、俺の手から短髪のシルバーアクセの冷たさが消える。
──座っている余裕は、ない。