君にキス。
きっとわかっていたんだと思う、前川はずっと前から。
俺が、あの噂を、『前川が深を好き』という噂を知っていたことを。
「深、」
前川の言葉を鵜呑みにすることなく、俺は深の元へ向かった。
「あ? どした陸ー」
ケータイをいじりながら、声だけを俺に向ける。
そんな深のケータイを取り上げ、
「こら! 返しなさーい!」
と口を尖らせる深の腕を掴んで、そのまま教室を出た。
どうしたんだよ、とか、どこ行くんだよ、とか、後ろからいろいろ聞こえてきたけど全部無視。
今は深からの質問に答えている暇はない。
何故なら、…これから始まるのは俺からの詰問タイムだからだ。