君にキス。








きっとわかっていたんだと思う、前川はずっと前から。


俺が、あの噂を、『前川が深を好き』という噂を知っていたことを。








「深、」


前川の言葉を鵜呑みにすることなく、俺は深の元へ向かった。




「あ? どした陸ー」


ケータイをいじりながら、声だけを俺に向ける。
そんな深のケータイを取り上げ、
「こら! 返しなさーい!」
と口を尖らせる深の腕を掴んで、そのまま教室を出た。






どうしたんだよ、とか、どこ行くんだよ、とか、後ろからいろいろ聞こえてきたけど全部無視。


今は深からの質問に答えている暇はない。




何故なら、…これから始まるのは俺からの詰問タイムだからだ。
< 86 / 88 >

この作品をシェア

pagetop