君にキス。






ちゃっかりした字、国崎陸斗(クニサキ リクト)、そう書かれている紙に、


有り得ない、と。






俺のこのひねくれた性格は、すぐには直らないらしい。


「……」




自分の紙を見てただただ呆然として、ふうっとため息一つ。


「………帰るか」




外から眩しく差し込む夕日光に目を細め、教室を出た。

生徒はほとんど下校済み、空き教室で数人だべっているぐらいだ。







微かな笑い声だけが廊下に響く。
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