王子様は夢の中---いいえ、違うの---
───その人が通る───
あたしが声をかけてしまったあの人。
大河の顔が、ひきつるのがわかる。
あたしは大河の手を、しっかり握った。
「…?千晃?」
「大河…大丈夫。」
「おぅ!」
その人は、今は寂しそうに歩いていた。
彼女がいない。───
どうしてだろう───
その人は、あたしを見つけた。
「あの、さっきはすみませんでした。」
近づいてくる彼に、あたしは言った。
「いいえ。その、彼は恋人?」
それには、大河が応えた。
「はい。さっき、結ばれました。」
男性は、何故か寂しそうな顔をして、
「そうですか。僕は、さっき振られてしまいました。
それで、少しあなたのことが気になって……
すみません。
お幸せに………。」
「あなたになら、すぐに幸せがきますよ、たぶん!!」
あたしは、偉そうに言った。
彼は、微笑んで、
あたしの額に、キスを落とした。
「さようなら…。」
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