もしも。
◆もしも私が私のままでいられるのなら◆
低い声が。
悲しい顔が。
行き場のない手が。力尽きた腕が。
涙が溢れそうな目が。


…ドキッとした。
なんでだろ…


「…」

沢水は俯いて私の手を握った。
震える手で動じない私の手を握る。

「…帰ります」

「嫌だ」

はっきりした声で私に言った。
付き合うつもりはない。結婚するつもりもない。

「もうちょっと考えて?」

「…はい」

どうして私は、はいなんて答えちゃったんだろ…

どんなに時間をかけても、答えは同じのはず。

また押し倒されて、抱かれた。
ゆっくりと這う舌に私はただ答える。

震える手を私に見せないようにキスばかりしてくる。

どうして、そんなに悲しむの?


泣きそうな声が。
泣きそうな顔が。
震える手が。

私を惑わす。

甘い言葉が私を惑わす。


甘いキスに。
甘い言葉に。
甘い時間に。
甘い愛撫に。
甘い想いに。



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