もしも。
◆もしも私が貴方になったら◆
翌朝、沢水が顔を紅潮させながら私の所に来た。

「結婚して?」

仕事中なのに沢水は言った。

「冗談でしょう」

冷たく私は言った。私と?冗談じゃない。

「これ…」


そっとポケットから箱を取り出した。
そして、箱を開けた。

輝いた指輪があった。
指…輪?

見上げると、ちょっとだけ悲しそうで嬉しそうな顔をしていた。


「言ったでしょ。本気なんだ」

「遊びでしょう?」

「違う」

どうしてだろう。
悲しい。虚しい。辛い。

こんな感情初めて…

「ずっと…ずっと好きだった。桜井さんが入社してから…」

ずっと…?
嘘。嫌、嫌、嫌。
惑わせないで。

嘘よ、嘘。私は…

私…は?



…嘘をついていたのは私…


《俺のこと嫌いでしょ》

嫌い。だった。

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