駄菓子屋松金 ─マツガネ─
形の悪いピンポン玉のように地面を滑り転がっていく男を、周りに居た救助された人質、愛護の隊員、テレビや新聞・雑誌の記者、その他野次馬が唖然とした表情で見つめる。
勿論、満足そうな顔をした常磐はその男の不様な姿を見て鼻を鳴らした。
「ヘッ、良い気味だぜ。庶民の底力舐めんなよこの野郎が」
その瞬間、何処からともなく拍手が沸き起こった。
常磐はポカーンとしたまま辺りを見回す。
「良いぞ!庶民代表!」
「格好良いよ!!」
「是非取材させて下さい!」
カノヤも驚いたようにそれを見てから、注目の的である常磐を一瞥した。
当の本人はそんなカノヤの様子に気付くと、何処か照れ臭そうに頬を掻いてから、取材と言うことで向けられたマイクを奪い取る。
そして口を開いた。
「町の隅で駄菓子屋やってまーす。是非庶民の皆さんは来て下さーい」
「また宣伝かよΣΣ!!」
隣に居たカノヤはテレビカメラに映っているとも知らずにツッコミを入れた。