駄菓子屋松金 ─マツガネ─



どういう事だ、と紫呉も眉を寄せ、浩也に尋ねるが、彼は顔面蒼白のまま首を横に振り続けるのみで、一切状況を説明する気は無い。


「冷蔵庫に入れたはずのプリンが無いって事ですか!?」


カノヤは目を丸くしながら尋ねる。

今度は、浩也は首を縦に振りながら、恐る恐る隣の尚輝を見た。

見るからに殺気立っている。

このままでは殺されてしまう!

直感でそう思った。


「取り敢えず、鈴カステラやるから、その殺気しまえ」

「空気読め!」


のほほんと尚輝にカステラを差し出し、常磐は言う。

この状況で眉一つ動かさず、自分のペースを保っている彼が羨ましくて仕方ないと思いながらも、カノヤはツッコミを入れていた。


「今度はわしでねェぞ」


麗雨を睨み付けた浩也に、彼女はポーカーフェイスを崩さずに答える。

感情の読めない表情だ。

嘘を吐くのが上手そうだ、等と考えながら、浩也は殺気立つ尚輝に勇気を振り絞って声をかけた。


「確かに、ここに入れたはずなんですが…何かの手違いで…」

「ふぅん…成る程ね。俺の楽しみを二度も奪った罪は重いよ。犯人は誰だか、知らないけどねぇ……」


これはマジで殺られる!!

浩也は背中に冷たい汗が伝うのを感じた。






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