駄菓子屋松金 ─マツガネ─


「サーセーン。郵便でーす」


一際通る声が、騒々しい室内に響いた。

それを聞いた浩也は、機転を利かせて会議室を出ていき、その場から逃れる。


「アイツずりィな…」


さり気なく常磐は呟き、浩也が出ていった扉の先を見つめた。

時折、止めに入った紫呉の飛び道具が色々飛んでくるが、それを紙一重で眉一つ動かさずに避けながら、常磐は新しい鈴カステラの袋を開けた。

その時、段ボールを持った浩也が戻ってきた。


「あのー、郵便が来ましたよ。車山副隊長宛てです」

「ふぅん。後にしてもらえる? 今手が離せないから」


尚輝は見向きもしない。


「…北国の白いプリン12個入り、北国の乳製品詰め合せ」


仕方なく浩也が荷物の名前を読み上げると、尚輝は喧嘩の手を止め、荷物を取り上げた。


「わァ、アイスとかチーズも入ってるんだ。早速食べよう♪ 仕方ないから統帥の座は譲っといてあげるよ。それじゃ、ゆっくり食べたいから邪魔するなよ」


邪魔したら殺す、そう言い残し、素早くその場を立ち去った。


「……何、あれ………」


呆気にとられたカノヤは、小さく呟いた。

アホみたいなプリン騒動は、呆気なく幕を閉じた。





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