駄菓子屋松金 ─マツガネ─
顔を上げた姿勢のまま、常磐はしばらく硬直する。
戸口に立っているのは、確かにあの又傘麗雨だ。
しかし、
「制服……………?」
常磐は間抜けな表情で呟く。
そう、今の彼女はベージュのセーターにチェックのスカート、襟元には可愛らしい赤いリボンを結んだ、女子高生だったからだ。
さらに、床に屈んでいる常磐は必然的に麗雨を見上げる形になり、そこからは男のロマンが見え隠れする。
──白か………
うん、なかなか清楚なイメージですな、等と一人納得しながら、常磐は彼女に尋ねた。
「麗雨ちゃんって学生だったっけ? 俺、初耳」
すると、彼女は首を横に振り、ペシャンコの学生カバンを持ち上げる。
「わしゃ学校なんざ行っとらん。今回はあれ、潜入捜査ってヤツ?」
「潜入捜査ァ!?」
不思議そうに声を上げたカノヤ。いつの間にか近くに立っていたらしい。
「おうよ。薬物が流行ってるでな、どうもきな臭い学校に一時的に入学したんだわァ」
呑気に説明する彼女に、この捜査がどのように転がっていくかなんて、わかるはずも無かった。
×繋ぎ止める者×