【番外編】苺みるくの秘密
男の腕に自分の腕を絡ませて桜井がベタベタと男に引っ付いていたのは、次の日の朝のことだった。
「林くんって大人っぽくてカッコいいよねぇ」
「そ、そんなことないさぁ」
「美結、結構気に入ってるんだ。林くんのこと」
「うははっ。嬉しいなぁ!」
廊下に響くお気楽な男の声。
うはうはしてんなよバカ男。
桜井はまるで僕に見せつけるかのようにして、林という何の魅力もない男を上目遣いで見上げる。
男を見下すクセにそういうことは得意な君だから、僕は困るんだ。
チラチラ僕を見ては男にベタベタしている。
ねえ、なんの仕返しなわけ?
「美結はぁ、林くんみたいな人が好……」
――パシッ
僕は桜井の腕を掴んだ。
“好き”とでも言いたかったんだろうけど、続きは言わせてやらないよ。
「な、なによアナタ!」
「うるさい」
僕はそのまま桜井を新聞部へ連れて行った。