【番外編】苺みるくの秘密
慎は時々、残酷な台詞を言う。
あたしの可愛げのないところを、“嫌いじゃないな”とか“ヤキモチ妬かれたら嬉しい”とか……。
あたしと慎は付き合っているわけじゃなかった。
だからいちいち期待させるようなこと言うのはやめてほしいのよ。
慎の言葉に一喜一憂してあたしらしくもない。
慎には彼女が居た時期があったけど別れてしまった。
慎はあたしに“彼女が忘れられない”って言ったけど、その後彼女の話は一度だってしなかった。
あたし達はごく自然に一緒に居たと思う。
図書室で会う回数が増えて同じ時間を共有して。
慎の好きな小説を読んで慎の好きな作家を知って、慎の嫌いなモノとか好きなモノとか知って。
お互いを名前で呼び合うようになって、あたし達は確かに近づいていた。