【番外編】苺みるくの秘密
慎は立ち上がるとこっちへ向かってきて、あたしの手をひいて教室を後にした。
今すぐに握られた手を強く握り返してしまいたいと思った……。
慎はちょっと荒々しくあたしを図書室に連れ込んだ。
窓から見える桜が夕焼けに照らされて綺麗に見える。
「学年トップのクセにあんなこと言ってよかったの?」
「構わない。それに葉月を侮辱されて黙ってる方がどうかと思う」
穏やかに笑う慎の表情は桜よりもずっと綺麗だった。
見惚れてしまう程に。
お礼を言うのなら今だと思った。
早く、「ありがとう」って言わなきゃ。
そう思ってもなかなか言えずに、いつまでも立ち尽くしているあたしに慎は問いかける。
「どうしたの葉月? ほら、勉強しよう? わからないところがあるんだろう?」
窓際の席に座る慎はあたしを見上げて、メガネの奥の瞳を緩める。