【番外編】苺みるくの秘密


「な……なんで……ち…あき…」

「は? お前が先に入るって言ったんだろ?」

「そ、そそ、そうだけど……」

「で、オレはお前が入った後に入ってきたんだけど?」


な……!

そういう意味で聞いたなんて!

卑怯だよぉ……。

千秋は腰にタオルを巻いている。

だけどあたしはすっぽんぽんだ。



「やだ……無理、………出る!」

「却下」


ガクガクしながら身体を隠して言うと千秋は鼻で笑ったのだ。



「目、閉じててやる」

「へ……? な、なに?」


恐る恐る千秋を見上げる。

すると千秋は湯船を顎で示した。



「入れば?」


千秋はそっと目を閉じた。

憎たらしいくらいに端正なその顔を見ながら、あたしは意を決して湯船に飛び込んだのだ。


ドアの前に千秋が居る以上こうするしかなかった。



鬼だ鬼だ鬼だ!

意地悪バカ千秋!

しゅんっ……。

 

< 65 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop