【番外編】苺みるくの秘密


終業式が終われば高校最後の夏休みに入る。

その少し前だった。

オレがアイツを呼び出したのは。



「いきなり呼び出してどういう風の吹き回しだ?」

「話があるからお前を呼んだ」


千秋がオレの部屋に来たのはすげぇ久しぶりだった。

こうやって向き合うのも、オレとは違う千秋の低い声をすぐそばで聞くのもだ。



「やけに真面目な顔してんだな? どうしたわけ?」


ドアの前に立ちながらオレを見る千秋は、こんな状況でも冷静だ。

それがオレの苛立ちを煽る。



「どうしたじゃねぇよ。わかってるクセにとぼけんなよ? シイのことだ」


好きな女のことで真面目になるのは当たり前だろうが。



「椎菜が、なに?」


千秋はきっとオレよりも真面目な顔をしてた。

 

< 94 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop