My Prince ~運命の出逢いは、アイドルと…~
「そう…」
返事に困ったのか、里菜さんは、目の前のブラックコーヒーに手を伸ばした。
「だけど、記事に書いてあった内容は、事実とはちょっとずれてて…」
あたしの言葉に、里菜さんが小さく溜息をついた。
「世の中って、そういうものなの…」
静かに言い放つ里菜さんの瞳には、なぜか満悦の色が見えた。気がした。
「で、雄哉とは会ってないの?」
「はい。騒ぎが起きてからは、1度も。」
「会いたくならない?」
同情するような顔つきの里菜さん。
「…正直に言えば……会いたい…です」
「なら、会えばいいじゃない?」
「あたしが会うことで、雄哉くんに迷惑かけちゃうし、ファンの子も傷つけちゃうし……
だから…」
「そんなの、会った次に考えればいいことでしょ?笑佳ちゃん、もっと自分の気持ちに素直にならなきゃ。」
里菜さんは、まっすぐにあたしを見つめる。
「…あ、部外者のあたしが勝手にごめんね。」
「いえ…」