My Prince ~運命の出逢いは、アイドルと…~
「え…?」
「胸元のボタン、取れてるから。とりあえずこれ掛けとけば?」
上野智也くんは、高瀬くんからタオルを受け取って、あたしの肩に掛けてくれた。
「あ…ありがとう…ございます」
…優しい……
運転席には、いつの間にか別のスタッフさんらしき人が座っていて、車を出そうとしていた。
車が動き出す直前、上野智也くんはスモークガラスの窓を開けて、言葉を発した。
「あんた、絶対クビだよ?」
外で突っ立ってるマネージャーさんだった男を見て。
そのまま、車は動き始めた。
「あの…あたしのせいで…」
「ん?」
上野智也くんが優しい表情であたしを見る。
「…迷惑かけちゃって、ごめんなさい…」
「なんで謝んの。」
上野智也くんは、フッと笑って言った。
「悪いのは、あの新人マネージャーだよ?
もともと考えが甘いとこあったから…。いつもは違う人なんだけど、今日は代役だったの。」
すらすらと隣で喋るこの人が上野智也くんだと思ったら、なんだか不思議な気持ちになった。
「…名前、何てゆーの?」